オーラル・ヒストリー協会準備室
設立にあたって

御 厨  貴

オーラル・ヒストリー協会をそろそろ立ち上げる時期が到来した。いわゆる「オーラル・ヒストリーと政策研究」という形でのオーラル・ヒストリーを開始して、今年で丸9年になる。来年でちょうど10年ということだ。

1995年に都立大学法学部に「戦後政策回顧研究会」を創り、細々とオーラル・ヒストリーを開始し、1997年には創設と同時に政策研究大学院大学の最初のリサーチユニットとして、政策情報プロジェクトが設けられた。そして2000年にはさらにC.O.Eオーラル・政策研究プロジェクトとして格段にバージョンアップされた。いまやそのプロジェクトが着地点を目指して、大量の成果物の刊行へと向かう中、新たに東京大学先端研御厨研究室の柱としてオーラル・ヒストリープロジェクトが樹立される。

先端研オーラルは、自らも重点的なオーラル・ヒストリーを試みる他、世界各国、日本全国のいたる所で行われつつあるオーラル・ヒストリーのコミュニケーションセンターの役割を果たし、同時にオーラル・ヒストリーの方法論的発展やオーラル・ヒストリアンの人材育成を目指し、法的処理や保存保管、そして公開の問題を併せて広く考えるために、ここにオーラル・ヒストリー協会準備室を設立する。

いきなり協会ではなく、準備室としたのは、拙速主義を避け、できることを一つ一つ洗い出し、堅実な運営を図ろうと考えたからである。

C.O.Eプロジェクトから引き継いだ「オーラル・ヒストリー方法論研究会」を当初の運営の要としながら、徐々に協会の立ち上げに行き着きたいと思う。

(2003年9月記)